美しさとは、何でしょうか。
この根源的な問いは、大昔から現在に至るまで、絶えず色んな芸術家や哲学者、そして市井の人々の間で絶え間なく論じられてきました。色んな観点からの美の捉え方、美学が存在していますが、これといった確立した答えはいまだ見つかっていないようです。それだけ美というものが神秘的で、理屈で説明できない魅力があるのかもしれませんが。
瞳の白目と黒目のコントラスト、顔のシンメトリー、ウエストとヒップの比率(6:10から7:10が魅力的と言われています)など、いわゆる外見の数値的な評価も一つにはあります。世界で最も美しい顔30人、のようなよくあるランキングを見ていると、上位の方々は大抵左右対称な綺麗なお顔をしています。
一方、あの女優さんのお顔はなんだかわからないけど他と違う美しさだ、一度見ると忘れられないなあというような印象的な美しさの方のお顔は、いわゆる黄金比というものから見るとどこか一部分が大きく外れていたりします。目がちょっと離れていたり、鼻が大きすぎたり、すきっ歯だったり。もう亡くなってしまいましたが、あの有名なフレンチアイコン、ジェーン・バーキンの美しいすきっ歯は記憶に新しい一例です。そういえば昔、同じく美しいフレンチアイコンであるレア・セドゥのすきっ歯に憧れて、どうにかすきっ歯になれないかと、フロスで前歯の間をぐっぐと押したりしてみたこともあります。私の立派な前歯はびくともしませんでしたが。
私自身、昔からアートやファッション、映画など美しいものが大好きで、それに関連して人間の美しさについてもよく考察したりしていましたが、社会人になって美容医療に関わり始めてから、より一層、人の美しさについて自問自答することが増えました。昨今の美容医療は、SNSの台頭と医療の過度な商業化によって、この人みたいな額になりたい、目になりたい、鼻になりたい!という人がかなり増え、それがオペや注入によって、一昔前よりかなり安価で叶ってしまう現実があります。その結果同じような顔が量産されている今の状況をみて、皆美しくなりたくてそうしているのに、逆に真の美しさから遠ざかっているような気がしていました。もちろん、長年のコンプレックスを解消できるという救いはありますが、物事は必ず二面性を持っていますよね。やはり外見至上主義では決して叶わない、真の美しさの源があるのだと思いました。
いろんな女性を見て、話して、考えて、私が最終的にたどり着いた結論は、「美は心体魂の健康に宿る」というものでした。自分自身の体に悪いところがなく、いたって健康で、心も穏やかで満たされていて、さらに自分自身の生きがいや哲学を持っていると、そこからその人その人の個性的な美しさがじわーっと匂い立ち、その全てがその人の外見にその人なりの美の姿として全て現れる。現時点で、私が思う人の美しさとは、これではないかと思っているんです。
最近、良い動画に出会いました。
女優、松本まりかさんの「美容論」。ここまで美の哲学を持ち、語れる方ってそう多くないんじゃないかと思います。
この方は女優としてのキャリアが花咲くまで少し時間がかかったらしく、売れるまでの間、満足のいかない自分自身との対話を常にしていたそうです。女優さんなのでダンスレッスンをずっと続けていたようですが、毎回レッスン中壁一面の鏡と対峙するたびに、その時の自分が少しでも怠けていると、それが全て鏡に映し出されてしまう。そしてその映し出されるどんな自分ともずっと、対峙し続けた、と言います。
松本まりかさんの提唱する美。それは、「外側のビューティー」「インナービューティー」「マインドビューティー」の3つ。これらが三位一体となって、その人の美を作り上げる、と言います。
とても共感する哲学ですし、そこに辿り着くまでの長年の苦労を、見ているこちら側も一緒に反芻したような気持ちになり、いたく感動しました。そしてその苦労があったからこそ、この人の美の哲学は強くしっかりした芯が一本通っているのだと、とても痺れました。
今後も私自身の美の哲学をしっかり貫きながら、丁寧に生きて、さらに飽くなき美の追求をしていこうと思ったのでした。